以下は、スピノザが『エチカ』において行なった汎神論の証明の内容の要約です。あくまでも要約であり実際にスピノザが書いた文章ではありません。
定義
自己原因
=その本質が存在を含む物
=その本性が存在するとしか考えられない物
実体
=それ自体の内に存在してそれ自体を通して認識される物
=その概念が他の概念から独立して形成されうる物
属性
=知性が実体に関してその本質を構成すると知覚する物
様態
=実体の発現
=他の物の内に存在して他の物を通して想定される物
神
=絶対的に無限な存在
=それぞれが永久であり無限である本質を表現する無限な属性から成る実体
と定義する。
公理
存在する全ての物はそれ自体か他の物の内に存在する。
結果の認識は原因の認識に依存して原因の認識を含む。
共通点を持たない物は互いに他から認識されえない。つまり、一方の概念は他方の概念を含まない。
と仮定する。
定理
定理1
実体は本性によってその発現に先立つ。
■証明
実体
=それ自体の内に存在してそれ自体を通して認識される物
=その概念が他の概念から独立して形成されうる物
と
様態
=実体の発現
=他の物の内に存在して他の物を通して想定される物
から明らかだ。
定理2
異なる属性を持つ2つの実体は共通点を持たない。
■証明
実体
=それ自体の内に存在してそれ自体を通して認識される物
=その概念が他の概念から独立して形成されうる物
から明らかだ。
定理3
互いに共通点を持たない物は、一方が他方の原因でありえない。
■証明
共通点を持たない物は互いに他から認識されえない。つまり、一方の概念は他方の概念を含まない。
と
結果の認識は原因の認識に依存して原因の認識を含む。
から明らかだ。
定理4
異なる2つか複数の物は、その実体の属性の違いかその実体の発現の違いによって、互いに区別される。
■証明
存在する全ての物はそれ自体か他の物の内に存在する。
と
実体
=それ自体の内に存在してそれ自体を通して認識される物
=その概念が他の概念から独立して形成されうる物
と
様態
=実体の発現
=他の物の内に存在して他の物を通して想定される物
から、知性に加えて実体と実体の発現の他に物は存在しない。
言い換えれば、
属性
=知性が実体に関してその本質を構成すると知覚する物
から、
実体の属性と発現の他に複数の物を互いに区別しうる物は存在しない。
定理5
宇宙の内に同じ属性を持つ2つか複数の実体は存在しえない。
■証明
異なる2つか複数の物は、その実体の属性の違いかその実体の発現の違いによって、互いに区別される。
言い換えれば、異なる2つか複数の実体が存在するならば、①その実体の属性の違いか②その実体の発現の違いによって、互いに区別される。
①実体の属性の違いによって区別されるならば、同じ属性を持つ実体は1つ以上存在しえない。
②実体の発現の違いによって区別されるならば、
実体は本性によってその発現に先立つ。
から、
実体をそれ自体において考察すれば、それは他と異なると考えられない。
したがって、
宇宙の内に同じ属性を持つ2つか複数の実体は存在しえない。
定理6
1つの実体は別の実体から産出されえない。
■証明
宇宙の内に同じ属性を持つ2つか複数の実体は存在しえない。
言い換えれば、
異なる属性を持つ2つの実体は共通点を持たない。
から、
互いに共通点を持つ2つの実体は存在しえない。
したがって、
互いに共通点を持たない物は、一方が他方の原因でありえない。
から、
1つの実体は他の実体の原因でありえない。
言い換えれば、
1つの実体は別の実体から産出されえない。
定理7
実体の本性には存在が属する。
■証明
1つの実体は別の実体から産出されえない。
から、実体はその自己原因だ。
言い換えれば、
その本質は必然的に存在を含む。
言い換えれば、
その本性には存在が属する。
定理8
神は必然的に存在する。
■証明
神が存在しないならば、その本質は存在を含まない。
しかし、
実体の本性には存在が属する。
から、
それは不条理だ。
したがって、神は必然的に存在する。
定理9
神に加えてどのような実体も存在しえない。
神に加えて、何らかの実体が存在するならば、その実体は神の何らかの属性によって説明されなければならない。
そして、そのゆえに、
同じ属性を持つ2つの実体が存在する。
しかし、
宇宙の内に同じ属性を持つ2つか複数の実体は存在しえない。
から、
それは不条理だ。
したがって、
神に加えてどのような実体も存在しえない。
定理10
全ての物は神の内に存在する。
■証明
神に加えてどのような実体も存在しえない。
から明らかだ。