現代語訳(口語訳)
(それを聞いた)蒋氏は大変悲しみ、涙をさかんに流して言いました。
「あなたは哀れんで私のことを生かそうとなさるのでしょう。
私のこの仕事の不幸さは、私の税(の納め方)をもとに戻したときの不幸さには及びません。
もし私がこの仕事をしていなければ、既に(税に)苦しんでいたでしょう。
私の一族が三世代に渡ってこの村に住み着いてから今日まで、積もりに積もって60年になります。
しかし村の近所の人たちの生活は日に日に困窮し、その土地の作物は(税としてもっていかれて)尽き、その家の収入は(税として)納め尽くし、泣き叫んで(他の土地へ)引っ越していき、飢えと渇きで倒れてしまうのです。
風雨にさらされて、寒さや暑さの中で生活をし、有毒な空気を吸って、しばしば死者が重なりあっています。
以前私の祖父と(同じ時代に村に)いた人は、今ではその家は、10軒のうち1つもありません。
私の父と(同じ時代に村に)いた人は、今ではその家は、10軒のうち2,3軒もありません。
私と(同じ時期に村に)12年いる人は、今ではその家は、10軒のうち4,5軒もありません。
死んだのでなければ(よその土地に)移っていっただけなのです。
しかしながら私はヘビを捕る仕事をして一人(この村に)生き残っているのです。
つづき
単語・文法解説
汪然 | 涙がさかんに流れる様 |
将哀而生之乎 | 「将」は再読文字。「まさに〜(せんと)す」と読み、「まさに〜しようとする」と訳す |
蹙 | 「縮まる、減る」といった意味であるが、ここでは「逼迫する、困窮する」の意で訳す |
廬 | 粗末な家 |
転徙 | 転居、引っ越すこと |
頓踣 | 倒れること |
毒癘 | 有毒の空気 |
室 | ここでは「家」を指す |