現代語訳(口語訳)
結婚して数年は、(男性の杜子春への)愛情はとても厚いものでした。
(杜子春は)一人の男の子を産みました。
(その子供は)わずか2歳で、とても賢く他に並ぶ者がいないほどでした。
盧(杜子春の夫)は子供を抱きながら(杜子春に)話しかけましたが、(杜子春は)応えませんでした。
さまざまな方法で(杜子春の)気を引いてみましたが、とうとう(杜子春の口から出る)言葉はありませんでした。
盧は大変怒って言いました。
「昔、賈という大夫(貴族)の妻は、夫のことを見下し、少しも笑わなかった。
しかし賈がキジを射るのを見て(その様子がおもしろく)、夫への恨みを解いたという。
いま私は、身分が低く卑しい身なので賈には及ばないが、(私の)文芸はただキジを射るだけのものではないのだ。
それでも(お前は)何も話さない。
立派な成人男性がその妻に見下されることがあれば、どうして息子を必要とするだろうか、(いやしない)」。と。
そして(盧は息子の)両足を以って、その頭を石の上に打ち付けてしまいました。
(盧の)手の動きに応じて(子供の)頭は砕け、血が数歩先まで飛び散りました。
(この時)杜子春の心に愛が生じて、たちまち老人との約束を忘れて、思わず声を出して言いました。
「あぁ。」と。
つづき
単語・文法解説
聡慧 | 極めて賢いこと、聡明であること |
賈大夫 | 賈という名の大夫(貴族)で、容貌がひどく醜く、妻からもひどく見下されていたという話の引用 |
陋 | 身分が低く卑しいこと |
大丈夫 | 丈夫は成人男性を、これに大がつくと立派な成人男性を意味する |
安用其子 | 反語を表し、「安A」で「どうしてAだろうか、いやない」と訳す |