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防人歌『韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして』現代語訳と解説・品詞分解
著作名: 走るメロス
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「韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして」現代語訳と解説

このテキストでは、万葉集に収録されている歌「韓衣裾に取りつき泣く子らを置きてそ来ぬや母なしにして」の原文、わかりやすい現代語訳(口語訳)、解説そしてその品詞分解を記しています。



万葉集とは

万葉集は、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集です。平成の次の元号である「令和」(2019年5月1日〜)の由来となった『梅花の歌三十二首并せて序』をはじめ、天皇や貴族、役人や農民など様々な身分の人々が詠んだ4500以上の歌が収録されています。


原文

韓衣裾に取りつき泣く子ら置きてそ来ぬや母なしにして


現代語訳(口語訳)

すそにすがりつい泣く子どもを置いてきてしまったなぁ。母親も(死んでしまって)いないのに。



解説・鑑賞のしかた

この歌は防人歌と言われるものです。防人(さきもり)とは、飛鳥時代から平安時代の間に課せられていた税の1つで、北九州の警護を担当する仕事でした。この時代は税金とはいっても、お金ではなく布などの現物や労働で納めていました。詳しくは日本史の授業で学習すると思います。

北九州までの移動にかかるお金は自分で負担しなければなりませんし、防人として働いていてもそのほかの税が免除されることはなく、勤務中に死んで帰ってこれないことも多々ありました。

これは、防人に行くお父さんが、「泣いてすがる子どもを、母親も死んでしまってもういないのに国に置きざりにしてきてしまった」と子どものことを思って詠んだ歌です。



単語

韓衣唐衣とも書く。裾や袖にかかる枕詞
泣く子ら「ら」は子どもたちと複数形で訳すのではなく、親しみを表すためにつけている
置きてそ来ぬ「そ~ぬ」で係り結び。終止形で結んでいる珍しい形


品詞分解

※名詞は省略しています。



韓衣枕詞
格助詞
取りつきカ行四段活用・連用形
泣くカ行四段活用・連体形
子ら
格助詞
置きカ行四段活用・連用形
接続助詞
係助詞
カ行変格活用・連用形
完了の助動詞・終止形
間接助詞
母なし
断定の助動詞・連用形
して接続助詞


著者情報:走るメロスはこんな人

学生時代より古典の魅力に取り憑かれ、社会人になった今でも休日には古典を読み漁ける古典好き。特に1000年以上前の文化や風俗をうかがい知ることができる平安時代文学がお気に入り。作成したテキストの総ページビュー数は1,6億回を超える。好きなフレーズは「頃は二月(にうゎんがつ)」や「月日は百代の過客(くゎかく)にして」といった癖のあるやつ。早稲田大学卒業。

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