はじめに
このテキストでは、
小倉百人一首に収録されている歌「
ちはやぶる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」の現代語訳・口語訳と解説、品詞分解をしています。この歌は
古今和歌集、
伊勢物語にも収録されています。
原文
ちはやぶる神代も
きかず竜田川
からくれなゐに水
くくるとは
ひらがなでの読み方
ちはやぶる かみよもきかず たつたがは からくれなゐに みづくくるとは
現代語訳・口語訳
神の時代にも聞いたことがない。竜田川の水を(紅葉葉が)あざやかな紅色にくくり染めにするとは。
解説
この歌は
在原業平が詠んだ歌です。古今和歌集には、「屏風に描かれた、竜田川に紅葉が流れている様子を題材に詠んだ歌」と但し書きがあります。一方で伊勢物語には、「竜田川に出かけていって実際に景色を見て詠んだ歌」とも書かれています。
この歌は
ニ句切れの歌です。「神の時代にも聞いたことがない」と始まり、詠み手の心を強くひきつけます。では何を聞いたことがないのか。それは「竜田川の水を紅葉があざやかな紅色に染めている景色」であると続いています。このことから、この歌には
倒置の技法も用いられていることがわかります。
ちはやぶる | 「神」や地名の「宇治」にかかる枕詞 |
神代 | 神々が国を治めた時代 |
竜田川 | 現在の奈良県にある川で紅葉の名所。歌枕として用いられる代表的なもののひとつ |
からくれなゐ | 「韓紅/唐紅」韓から伝わった紅であざやかな紅色 |
くくる | 括り染め(布を糸でくくって白い部分を残す染め方)にすること |
品詞分解
※名詞は省略しています。
ちはやぶる | 枕詞 |
神代 | ー |
も | 係助詞 |
きか | カ行四段活用「きく」の未然形 |
ず | 打消の助動詞「ず」の終止形 |
竜田川 | ー |
からくれなゐ | ー |
に | 格助詞 |
水 | ー |
くくる | ラ行四段活用「くくる」の終止形 |
と | 格助詞 |
は | 係助詞 |