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平家物語原文全集「阿古屋之松 1」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

阿古屋之松

大納言一人にも限らず、警めを蒙る輩おほかりけり。近江中将入道蓮浄、佐渡国、山城守基兼、伯耆国、式部大輔正綱、播磨国、宗判官信房、阿波国、新平判官資行は美作国とぞ聞えし。

そのころ入道相国福原の別業におはしけるが、同じき廿日、摂津左衛門盛澄を使者で、門脇宰相の許へ、

「存ずる旨あり。丹波少将急ぎこれへたべ。」


とのたまひつかはされたりければ、宰相、

「さらば、ただありし時、ともかくもなりたりせば、いかがせむ。今更物を思はせんこそかなしけれ。」


とて、福原へ下り給ふべきよしをのたまへば、少将なくなく出で立ち給ひけり。女房達は、

「かなはぬもの故、なほもただ宰相の申されよかし。」


とぞ嘆れける。宰相、

「存ずるほどの事は申しつ。世を捨つるより外は、いまは何事をか申すべき。されどもたとひいづくの浦におはすとも、我が命のあらむ限りは、とぶらひ奉るべし。」


とぞのたまひける。

つづき
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・平家物語原文全集「阿古屋之松 1」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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