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平家物語原文全集「烽火之沙汰 2」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

烽火之沙汰

太政入道も、頼み切ったる内府はかやうにのたまふ。力もなげにて、

「 いやいやこれまでは思ひも寄りさうず。悪党共が申す事につかせ給ひて、僻事なんどや出で来むずらんと、思ふばかりでこそ候へ」


とのたまへば、大臣、

「たとひいかなる僻事出でき候ふとも、君をば何とかし参らせ給ふべき」


とて、つい立って中門に出で、侍共に仰せられけるは、

「只今重盛が申しつる事共をば、汝等承らずや。今朝よりこれに候うて、かやうの事共申し静めむとは存じつれども、あまりにひた騒ぎに見えつる間、帰りたりつるなり。院参の御供に於いては、重盛が首の召されけむを見て仕れ。さらば人参れ」


とて、小松殿へぞ帰られける。

主馬判官盛国を召して、

「重盛こそ天下の大事を別して聞き出だしたれ。我を我と思はん者共は、皆物具して馳せ参れと披露せよ」


とのたまへば、この由披露す。

「おぼろげにては騒がせ給はぬ人の、かかる披露のあるは、別の子細のあるにこそ」


とて、皆物具して、我も我もと馳せ参る。淀・はづかし・宇治・岡屋・日野・勧修寺・醍醐・小栗栖・梅津・桂・大原・しづ原・芹生の里にあぶれゐたる兵共、或いは鎧着て未だ甲を着ぬもあり、或いは矢負うて未だ弓を持たぬもあり。片鐙踏むや踏まずにてあはて騒いで馳せ参る。

つづき
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・平家物語原文全集「烽火之沙汰 2」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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