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平家物語原文全集「教訓状 4」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

教訓状

まづ世に四恩候ふ。天地の恩、国王の恩、父母の恩、衆生の恩、これなり。その中に最も重きは朝恩なり。普天のした、王地にあらずといふ事なし。さればかの穎川の水に耳を洗ひ、首陽山に蕨をおっし賢人も、勅命そむき難き礼儀をば存知すとこそ承れ。いかに況や、先祖にもいまだ聞かざっし太政大臣をきはめさせ給ふ。いはゆる重盛が無才愚闇の身をもって、蓮府槐門の位にいたる。しかのみならず、国郡半ば過ぎて一門の所領となり、田園ことごとく一家の進止たり。これ稀代の朝恩にあらずや。今これらの莫大の御恩を思し召し忘れて、みだりがはしく法皇を傾け奉らせ給はん事、天照大神・正八幡宮の神慮にも背き候ひなんず。日本はこれ神国なり。神は非礼を受け給はず。しかれば君の思し召し立つところ、道理なかば無きにあらず。中にもこの一門は、代々の朝敵を平らげて、四海の逆浪を静むる事は、無双の忠なれども、その賞に誇る事は、傍若無人とも申しつべし。聖徳太子十七か条の御憲法に、

「人皆心あり。心おのおの執あり。彼を是し、我を非し、我を是し、彼を非す。是非の理、誰かよく定むべき。相共に賢愚となり、環のごとくして端なし。ここをもってたとひ人いかるといふとも、かへって我がを恐れよ」


とこそ見えて候へ。しかれども、御運尽きぬによって、御謀反既にあらはれぬ。その上仰せ合はさるる成親卿を召し置かれぬる上は、たとひ君いかなる不思議を思し召し立たせ給ふとも、何のおそれか候ふべき。所当の罪科をおこなはれん上は、退いて事の由を陳じ申させ給ひて、君の御為には、いよいよ奉公の忠勤を尽くし、民の為には、ますます撫育の哀憐を致させ給はば、神明の加護にあづかり、仏陀の冥慮に背くべからず。神明仏陀感応あらば、君も思し召しなほす事、などか候はざるべき。君と臣と並ぶるに、親疎わくかたなし。道理と僻事を並べんに、いかでか道理につかざるべき」

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・平家物語原文全集「教訓状 4」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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