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平家物語原文全集「教訓状 2」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

教訓状

主馬判官盛国、急ぎ小松殿へ馳せ参って、

「世は既にかう候」


と申しければ、大臣聞きもあへず、

「あは、はや成親卿が首をはねられたるな」


とのたまへば、

「さは候はねども、入道殿きせなが召され候。侍共も皆うったって、只今法住寺殿へよせんと出でたち候。法皇をば鳥羽殿へおしこめ参らせうど候が、内々は鎮西の方へ流し参らせうど擬せられ候」


と申しければ、大臣、いかでかさる事あるべきとは思へども、今朝の禅門の気色、さる物狂しき事もあるらむとて、車をとばして西八条へぞおはしたる。


門前にて車よりおり、門の内へ差し入って見給へば、入道腹巻を着給ふ上は、一門の卿相雲客数十人、おのおの色々の直垂に、思ひ思ひの鎧着て、中門の廊に、二行に着座せられたり。その外諸国の受領、衛府、諸司なんどは縁に居こぼれ、庭にもひしと並み居たり。旗竿共ひきそばめひきそばめ、馬の腹帯をかため、甲の緒をしめ、只今皆うったたんずる気色どもなるに、小松殿、烏帽子直衣に大紋の指貫のそばとって、ざやめき入り給へば、事の外にぞ見えられける。入道伏し目になって、

「あはれ、例の内府が世をひょうする様に振舞ふ。大に諫ばや」


とこそ思はれけれども、さすが子ながらも、内には五戒をたもって慈悲を先とし、外には五常を乱らず礼儀を正しうし給ふ人なれば、あの姿に腹巻を着て向かはむ事、おもばゆうはづかしうや思はれけむ、障子を少し引き立てて、素絹の衣を腹巻の上にあはて着に着給ひたりけるが、胸板の金物の少しはづれて見えけるをかくさうど、頻りに衣の胸を引き違へ引き違へぞし給ひける。


つづき

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・平家物語原文全集「教訓状 2」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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