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平家物語原文全集「小教訓 2」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

小教訓

入道なほ腹をすゑかねて、

「経遠、兼康」


と召せば、瀬尾太郎・難波次郎参りたり。

「あの男とって庭へ引き落とせ」


とのたまへば、これらはさうなくもしたてまつらず。

「小松殿の御気色いかが候はんずらん」


と申しければ、入道相国おほいにいかって、

「よしよし、をのれらは、内府が命をばおもうして、入道が仰せをば軽うしけるごさんなれ。その上は力及ばず」


とのたまへば、この事悪しかりなんとや思ひけん、二人の者立ち上がって、大納言を庭へ引き落とし奉る。その時、入道心地よげにて、

「取って伏せておめかせよ」


とぞのたまひける。二人の者共、大納言の左右の耳に口をあてて、

「いかさまにも御声の出づべう候ふ」


とささやいて、引き伏せ奉れば、二声三声ぞおめかれける。その体、冥途にて、娑婆世界の罪人を、或いは業のはかりにかけ、或いは浄頗梨の鏡に引き向けて、罪の軽重に任せつつ、阿防羅刹が呵責すらんも、これには過ぎじとぞ見えし。蕭樊とらはれて韓彭にらぎすされたり。兆錯戮をうけ周魏罪せらる。たとへば蕭何・樊噲・韓信・彭越これらは高祖の忠臣なりしかども、小人の讒によって過敗の恥をうくとも、かやうの事をや申すべき。


つづき

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・平家物語原文全集「小教訓 2」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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