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平家物語原文全集「小教訓 1」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

小教訓

新大納言は一間なるところにおしこめられ、汗水になりつつ、

「あはれ、これは日ごろのあらまし事の洩れ聞こえけるにこそ。誰洩らしつらん、定めて北面の者共が中にこそあるらむ」


なんど、思はじ事なうあんじつづけておはしけるに、うしろのかたより、足音のたからかにしければ、すは、ただ今、わがいのちをうしなはんとて、物のふ共が参るにこそ、と待ち給ふに、入道みづから、板敷たからかに踏みならし、大納言のおはしけるうしろの障子をさっとあけられたり。素絹の衣のみじからなるに、しろき大口踏みくくみ、ひじりづかの刀おしつくろげてさすままに、もってのほかにいかれる気色にて、大納言をしばしにらまへ、

「そもそも御辺は、平治にもすでに誅せらるべかりしを、内府が身にかへて申しなだめ、首をつぎ奉しはいかに。恩を知るを人とは言ふぞ。恩を知らぬをば畜生とこそ言へ。しかれども当家の運命尽きぬによって、迎へ奉たり。日ごろのあらましの次第、直にうけたまはらん」


とぞのたまひける。 大納言、

「まったくさる事候はず。人の讒言にてぞ候らむ。よくよく御尋ね候へ」


とぞ申されければ、入道言はせもはてず、

「 人やある、人やある」


と召されければ、貞能参りたり。

「西光めが白状まいらせよ」


と仰せられければ、持って参りたり。これをとって二三遍おしかへしおしかへし読み聞かせ、

「あな憎や、この上をば何と陳ずべき」


とて、大納言の顔にさっとなげかけ、障子をちょうど立ててぞ出でられける。


つづき
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・平家物語原文全集「小教訓 1」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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