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平家物語原文全集「西光被斬 3」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

西光被斬

入道大きに驚き、大声をもって、侍共呼びののしり給ふ事、聞くもおびただし。行綱なまじひなる事申し出だして、証人にやひかれんずらんとおそろしさに、大野に火を放ったる心地して、人も追はぬに、とり袴して、急ぎ門外へぞ逃げ出ける。入道、まづ貞能を召して、

「当家かたぶけうとする謀反のともがら、京中にみちみちたんなり。一門の人々にも触れ申せ。侍共もよほせ」


とのたまへば、馳せまわってもよほす。右大将宗盛卿・三位中将具盛・頭中将重衡・左馬頭行盛以下の人々、甲冑をよろひ、弓箭を帯し馳せ集ふ。その外侍共雲霞の如くに馳せつどふ。その夜のうちに、西八条には、兵共六七千騎もあらむとこそ見えたりけれ。

あくれば六月一日なり。いまだ暗かりけるに、入道、検非違使安倍資成を召して、

「きっと院の御所へ参れ。信成をまねひて申さんずるやうはよな、近習の人々、この一門を滅ぼして、天下みだらんとする企てあり。一々に召しとって、尋ね沙汰仕るべし。それをば君もしろしめさるまじう候と申せ」


とこそのたまひけれ。資成急ぎ御所へ馳せ参り、大膳大夫信成呼び出ひて、この由申すに色をうしなふ。御前へ参ってこの由奏聞しければ、法皇、

「あは、これらが内々はかりし事の洩れにけるよ」


とおぼしめすにあさまし。

「さるにても、こは何事ぞ」


とばかり仰せられて、分明の御返事もなかりけり。資成急ぎ馳せ帰って、入道相国にこの由申せば、

「さればこそ、行綱はまことを言ひけり。この事行綱しらせずは、浄海安穏にあるべしや」


とて、飛騨守景家・筑後守貞能に仰て、謀反の輩(ともがら)からめとるべき由下知せらる。よって二百余騎三百余騎、あそこここに押し寄せ押し寄せからめとる。


つづき


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・平家物語原文全集「西光被斬 3」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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