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平家物語原文全集「俊寛沙汰・鵜川軍 3」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

俊寛沙汰・鵜川軍

かの西光が子に、師高といふ者あり。これもきり者にて、検非違使(けびいし)五位尉に経あがって、安元元年十二月二十九日、追儺の除目に加賀守にぞなされける。国務をおこなふ間、非法非礼を張行し、神社・仏寺・権門・勢家の庄領を没倒し、散々の事どもにてぞありける。たとひ召公があとを隔(へだ)つといふとも、穏便の政(まつりごと)をおこなふべかりしが、かく心のままにふるまひしほどに、同じき二年夏の頃、国司師高が弟近藤判官師経、加賀の目代に補せらる。目代下着のはじめ、国府の辺に鵜川といふ山寺あり。寺僧どもが、境節湯をわかひて浴びけるを、乱入して追ひ上げ、我が身浴び、雑人どもおろし、馬洗はせなんどしけり。寺僧怒(いか)りをなして、

「昔よりこの所は、国方の者の入部する事なし。速やかに先例に任せて、入部の押妨を止どめよ」


とぞ申しける。

「先々の目代は不覚でこそ賤(いや)しまれたれ。当目代は、その儀あるまじ。ただ法に任せよ」


と云ふほどこそありけれ、寺僧どもは、国方の者を追出せんとす、国方の者どもは次(つい)でをもって乱入せんとす。打ち合ひ張り合ひしけるほどに、目代師経が秘蔵しける馬の脚をぞ打ち折りける。その後は互ひに弓箭(きゅうせん)・兵杖(ひょうじょう)を帯して、射合ひきり合ひ、数刻戦ふ。目代叶はじとや思ひけむ、夜に入って引き退く。その後当国の在庁ども催し集め、その勢一千余騎、鵜川に押し寄せて、坊舎一宇も残さず焼き払ふ。

つづき
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・平家物語原文全集「俊寛沙汰・鵜川軍 3」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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