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平家物語原文全集「祇王 11」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

祇王

その後入道、祇王が心のうちをば知り給はず、

「いかにその後何事かある。さては仏御前があまりにつれづれげに見ゆるに、今様、ひとつうたへかし」


との給へば、祇王参る程では、ともかうも入道殿の仰せをば背(そむ)くまじと思ひければ、落つる涙をおさへて、今様一つぞ歌ふる。

仏もむかしは凡夫なり 我らもついには仏なり

いづれも仏性具せる身を へだつるのみこそかなしけれ


と、なくなく二返歌ふたりければ、その座にいくらもなみゐたまへる平家一門の公卿、殿上人、諸大夫、侍に至るまで、皆感涙をぞ流されける。入道もおもしろげに思ひ給ひて、

「時にとっては神妙に申したり。さては舞も見たけれども、けふはまぎるる事出来たり。この後は召さずとも常に参って、今様をも歌ひ、舞なんどをも舞ふて、仏なぐさめよ」


とぞの給ひける。祇王とかうの御返事にも及ばず、涙をおさへて出でにけり。



続き

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・平家物語原文全集「祇王 11」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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