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平家物語原文全集「鱸(すずき) 3」

著者名: 古典愛好家
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平家物語

鱸(すずき)

平家かやうに繁昌せられけるも、熊野権現の御利生とぞ聞こえし。その故は、古(いにし)へ清盛公、いまだ安芸守たりし時、伊勢の海より、船にて熊野へまいられけるに、大きなる鱸(すずき)の、船に躍(おど)り入りたりけるを、先達申しけるは、

「これは、権現の御利生なり。いそぎ参るべし」


と申しければ、清盛のたまひけるは、

「昔周の武王の船にこそ、白魚は、躍り入りたりけるなれ。これ吉事なり。」


とて、さばかり十戒を保ち、精進潔斎の道なれども、調味して、家子・侍共に食はせられけり。その故にや、吉事のみうちつづいて、太政大臣まできはめたまへり。子孫の官途も、竜の雲に昇るよりは、猶すみやかなり。九代の先蹤をこえたまふこそ目出たけれ。


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・平家物語原文全集「鱸(すずき) 3」

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梶原正昭,山下宏明 1991年「新日本古典文学大系 44 平家物語 上」岩波書店

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