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蜻蛉日記原文全集「臨時のまつりあさてとて」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

臨時のまつりあさてとて

臨時のまつりあさてとて、助にはかに舞人(まひびと)に召されたり。これにつけてぞめづらしき文(ふみ)ある。

「いかがする」


などて、いるべきものみなものしたり。

試楽(しがく)の日あるやう、

「けがらひの暇(いとま)なるところなれば、内裏(うち)にもえまゐるまじきを、まゐりて来(き)てみ見出したてんとするを、よせ給ふまじかなれば、いかがすべからん、といとおぼつかなきこと」


とあり。胸つぶれて、いまさらになにせんにかと思ふことしげければ、

「とくさうぞきて、かしこへをまゐれ」


とて、いそがしやりたりければ、まづぞうち泣かれける。もろともに立ちて、舞ひとわたりならさせて、まゐらせてけり。


祭りの日、いかがは見ざらんとて出でたれば、北のつらになでふこともなき檳榔車(びりやうげ)、後(しり)、口うちおろしてたてり。口のかた、すだれの下より、きよげなる搔練(かいねり)に、むらさきのおりものかさなりたる袖ぞさしいでためる。女車なりけりと見るところに、車の後(しり)のかたにあたりたる人の家の門より、六位なるものの太刀はきたる、ふるまひ出できて、まへのかたにひざまづきてものをいふに、おどろきて目をとどめて見れば、かれが出で来(き)つる車のもとには、赤き人、黒き人おしよりて、かずもしらぬほどに立てりけり。よく見もていけば、見し人見し人のあるなりけりと思ふ。例の年よりはこととうなりて、上達部(かんだちめ)の車、かいつれてくるもの、みなかれを見てなべし、そこにとまりておなじところに口をつどへて立ちたり。我が思ふ人、にはかに出でたるほどよりは、供人(ともひと)などもきらきらしう見えたり。上達部(かんだちめ)手ごとにくだものなどさしい出つつ、ものいひなどし給へば、おもだたしき心ちす。また、ふるめかしき人も、例のゆるされぬことにて山吹のなかにあるを、うちちりたる中にさしわきてとらへさせて、かのうちより酒などとり出でたれば、かはらけさしかけられなどするを見れば、ただそのかた時(とき)許(ばかり)や、ゆく心もありけん。



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・蜻蛉日記原文全集「臨時のまつりあさてとて」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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