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蜻蛉日記原文全集「ひるつ方、渡らせ給ふべし」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

ひるつ方、渡らせ給ふべし

ひるつ方、

「渡らせ給ふべし。ここにさぶらへとなん仰せ事ありつる」


といふ。ものどもも来たれば、これかれさはぎて、日ごろみだれがはしかりつるところどころをさへ、ごほごほとつくるを見るに、いとかたはらいたく思ひ暮らすに、暮れはてぬれば、きたる男ども、

「御車の装束(さうぞく)なども皆しつるを、など今まではおはしまさざらむ」


などいふほどに、やうやう夜もふけぬ。ある人々、

「なほあやし、いざ人して見せにたてまつらん」


などいひて見せにやりたる人、かへり来て、

「只今なん御車の装束ときて、御随身ばらもみなみだれはべりぬ」


といふ。さればよとぞ、又思ふに、はしたなき心ちすれば、思ひなげかるることさらにいふかぎりなし。山ならましかば、かく胸ふたがる目を見ましやと、うべもなく思ふ。ありとある人もあやしくあさましと思ひさはぎあへり。ことしも三夜ばかりに来ずなりぬるやうにぞ見えたる。いかばかりのことにてとだに聞かばやすかるべしと思ひみだるるほどに、客人(まらうど)ぞ物したる。心ちのむづかしきにと思へど、とかくもの言ひなどするにぞ、すこしまぎれたる。



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・蜻蛉日記原文全集「ひるつ方、渡らせ給ふべし」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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