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蜻蛉日記原文全集「さてありふるほどに」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

さてありふるほどに

さてありふるほどに、京のこれかれのもとより文(ふみ)どもあり。みれば、

「今日、殿おはしますべきやうになんきく。こたみさへおりずば、いとつべたましきさまになん、世人も思はん。また、はたよに物したまはじ。さらんのちに物したらんは、いかが人笑へならん」


と、人々おなじことどもを物したるに、いとあやしきことにもあるかな、いかにせん、こたみはよにしぶらすべくもものせじと、思ひさわぐほどに、我がたのむ人、ものよりただ今のぼりけるままにきて、天下のことかたらひて

「げにかくてもしばしおこなはれよと思ひつるを、この君いとくちをしうなりたまひにけり。はや、なほ物しね。今日も日ならばもろともに物しね。今日も明日もむかへにまゐらん」


など、うたがひもなくいはるるに、いと力なく思ひわづらひぬ。

「さらば、なほ明日」


とて、物せられぬ。



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・蜻蛉日記原文全集「さてありふるほどに」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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