新規登録 ログイン

9_80 その他 / その他

蜻蛉日記原文全集「今は三月つごもりになりにけり」

著者名: 古典愛好家
Text_level_1
マイリストに追加
蜻蛉日記

今は三月つごもりになりにけり

今は三月つごもりになりにけり。いとつれづれなるを、忌みもたがへてらしばしほかにと思ひて、県(あがた)ありきの所にわたる。思ひさはりしこともたひらかになるにしかば、ながき精進(さうじ)はじめんと思ひたちて、物などとりしたためなどするほどに、

「勘事はなをやおもからん、ゆるされあらば、暮にいかが。」


とあり。これかれ見ききて、

「かくのみあくがらし果つるは、いとあしきわざなり。なをこたみだに御かへり、やむごとなきにも」


とさはげば、ただ

「月も見なくに、あやしく」


とばかり物しつ。よにあらじと思へば、いそぎ渡りぬ。つれなさは、そこに夜うちふけて見えたり。例のわきたぎることもおほかれど、ほど狭く人さはがしきところにて、息もえせず、胸に手をおきたらんやうにて明かしつ。つとめて、

「そのことかのこと、物すべかりければ」


とていそぎぬ。なをしもあるべき心を、また今日や今日やと思ふに、をとなくて四月になりぬ。

もいと近きところなるを、

「御門にて車立てり。こちやおはしまさむずらん」


など、やすくもあらず言う人さへあるぞ、いとくるしき。ありしよりもまして心を切りくだく心ちす。返りごとも

「なをせよ、なをせよ」


と言ひし人さへ、うくつらし。


Tunagari_title
・蜻蛉日記原文全集「今は三月つごもりになりにけり」

Related_title
もっと見る 


Keyword_title

Reference_title
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店
The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 2,046 pt 
 役に立った数 0 pt 
 う〜ん数 0 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!