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蜻蛉日記原文全集「からうじて行きすぎて」

著者名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

からうじて行きすぎて

からうじて行きすぎて、走井(はしりゐ)にて破籠(わりご)などものすとて、幕ひきまはしてとかくするほどに、いみじくののしるもの来(く)。いかにせん、誰ならん、供なる人見知るべきものにもこそあれ、あないみじと思ふほどに、馬にのりたるものあまた、車二三ひき続けてののしりて来(く)。

「若狹の守の車なりけり」


といふ。立ちもとまらで行きすぐれば、心ちのどめて思ふ。あはれ、ほどに従ひては思ふ事なげにても行くかな、さるは明け暮れひざまづきありくもの、ののしりてゆくにこそあめれと思ふにも、胸さくる心ちす。下衆ども、車の口につけるも、さあらぬも、この幕ぢかに立ちよりつつ水あみさわぐふるまひの、なめうおぼゆること物に似ず。我ともの人わづかに

「あふ立ちのきて」


などいふめれば、

「例もゆき来の人よる所とは知りたまはぬか、とがめ給ふは」


などいふを見る心ちは、いかがはある。


やりすごして今は立ちてゆけば、関うちこえて、打出(うちいで)の濱に死にかへりてゐたりたれば、先だちたりし人、舟にこも屋形ひきてまうけたり。ものもおぼえずはひ乗りたれば、はるはるとさし出だしてゆく。いと心ちいとわびしくもくるしうも、いみじう物かなしう思ふこと、たぐひなし。申(さる)のをはりばかりに、寺の中につきぬ。


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・蜻蛉日記原文全集「からうじて行きすぎて」

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The University of Virginia Library Electronic Text Center and the University of Pittsburgh East Asian Library http://etext.lib.virginia.edu/japanese/
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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