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更級日記 原文全集「東にくだりし親」

著者名: 古典愛好家
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更級日記

東にくだりし親

東にくだりし親、からうじてのぼりて、西山なる所におちつきたれば、そこにみな渡りて見るに、いみじううれしきに、月のあかき、夜ひとよ、物語などして、

  かかる世もありけるものをかぎりとて 君に別れし秋はいかにぞ

といひたれば、いみじく泣きて、

  思ふことかなはずなぞといとひこし 命のほどもいまぞうれしき

これぞ別れの門出といひ知らせしほどのかなしさよりは、たいらかに待ちつけたるうれしさも限りなけれど、

「人の上にても見しに、老いおとろへて、世に出で交らひしは、をこがましく見えしかば、我はかくてとぢこもりぬべきぞ」


とのみ、のこりなげに世を思ひいふめるに、心細さたえず。


東は、野のはるばるとあるに、東の山ぎはは、比叡の山よりして、稲荷などいふ山まであらはに見えわたり、南は、双(ならび)の岡の松風、いと耳近う心細くきこえて、内には、いただきのもとまで、田といふものの、ひたひき鳴らす音など、田舎の心地していとをかしきに、月のあかき夜などは、いとおもしろきを眺めあかしくらすに、知りたりし人、里とをくなりて音もせず。たよりにつけて、

「何事かあらむ」


とつたふる人におどろきて、

  思ひ出でて人こそとはね山里の まがきの荻に秋風はふく

といひにやる。



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・更級日記 原文全集「東にくだりし親」

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森山京 2001年 「21世紀によむ日本の古典4 土佐日記・更級日記」ポプラ社
長谷川 政春,伊藤 博,今西 裕一郎,吉岡 曠 1989年「新日本古典文学大系 土佐日記 蜻蛉日記 紫式部日記 更級日記」岩波書店

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