新規登録 ログイン

9_80 その他 / その他

枕草子 原文全集「ふと心おとりとかするものは」

著者名: 古典愛好家
Text_level_1
マイリストに追加
ふと心おとりとかするものは

ふと心おとりとかするものは、男も女も、ことばの文字いやしうつかひたるこそ、よろづのことよりまさりてわろけれ。ただ文字一つに、あやしう、あてにもいやしうもなるは、いかなるにかあらむ。さるは、かう思ふ人、ことにすぐれてもあらじかし。いづれをよしあしと知るにかは。されど、人をば知らじ、ただ心地にさおぼゆるなり。
 

いやしきこともわろきことも、さと知りながらことさらにいひたるは、あしうもあらず。わがもてつけたるを、つつみなくいひたるは、あさましきわざなり。また、さもあるまじき老いたる人、男などの、わざとつくろひ、ひなびたるはにくし。まさなきことも、あやしきことも、大人なるは、まのもなくいひたるを、若き人は、いみじうかたはらいたきことに消えいりたるこそ、さるべきことなれ。
 

何事をいひても、

「そのことさせむとす、いはむとす、何とせむとす」


といふ『と』文字を失ひて、ただ

「いはむずる、里へ出でむずる」


などいへば、やがていとわろし。まいて、文にかいてはいふべきにもあらず。物語などこそ、あしうかきなしつれば、いふかひなく、作り人さへこそいとをしけれ。

「ひてつ車に」


といひし人もありき。

「求む」


といふことを

「みとむ」


なんどは、みないふめり。



Tunagari_title
・枕草子 原文全集「ふと心おとりとかするものは」

Related_title
もっと見る 


Keyword_title

Reference_title
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 下」 新潮社

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 4,831 pt 
 役に立った数 1 pt 
 う〜ん数 0 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!