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枕草子 原文全集「はしたなきもの」

著者名: 古典愛好家
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はしたなきもの

はしたなきもの。こと人をよぶに、我ぞとてさしいでたる。ものなどとらするをりは、いとど。おのづから人の上などうちいひそしりたるに、おさなき子どものききとりて、その人のあるにいひいでたる。


あはれなることなど、人のいひいで、うち泣きなどするに、げにいとあはれなり、など聞きながら、涙のつといでこぬ、いとはしたなし。なき顔つくり、けしきことになせど、いとかひなし。めでたきことをみきくには、まづただいで来(き)にぞいで来(く)る。


八幡の行幸(みゆき)のかへらせ給ふに、女院の御桟敷のあなたに御輿とどめて、御消息申させ給ふ。世に知らずいみじきに、まことにこぼるばかり、化粧じたる顔、みなあらはれて、いかに見ぐるしからむ。宣旨の御使にて、斉信(ただのぶ)の宰相中将の、御桟敷へ参り給ひしこそ、いとをかしう見えしか。ただ随身(ずいじん)四人、いみじう装束きたる馬副(うまぞひ)の、ほそく白くしたてたるばかりして、二条の大路の広くきよげなるに、めでたき馬をうちはやめて、いそぎ参りて、すこし遠くよりおりて、そばの御簾の前にさぶらひ給ひしなど、いとをかし。御返うけたまはりて、またかへり参りて、御輿のもとにて奏し給ふほど、いふもおろかなり。


さてうちのわたらせ給ふを、見たてまつらせ給ふらむ御心地、思ひやり参らするは、とびたちぬべくこそおぼえしか。それには長泣きをして笑はるるぞかし。よろしき人だに、なほ子のよきは、いとめでたきものを。かくだに思ひ参らするも、かしこしや。



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・枕草子 原文全集「はしたなきもの」

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松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 上」 新潮社
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店

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