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枕草子 原文全集「職の御曹司におはしますころ」

著者名: 古典愛好家
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職の御曹司におはしますころ

職(しき)の御曹司(おんぞうし)におはしますころ、木立などの、遙かにものふり、屋のさまもたかう、けどほけれど、すずろにをかしうおぼゆ。

母屋(もや)は鬼ありとて、南へ隔ていだして、南の廂(ひさし)に御几帳たてて、又廂に女房はさぶらふ。


近衛(このゑ)の御門(みかど)より、左衛門の陣にまゐりたまふ上達部(かんだちめ)の前駆(さき)ども、殿上人のはみじかければ、大前駆小前駆(おほさきこさき)とつけて、聞きさはぐ。あまたたびになれば、その声どももみな聞きしりて、

「それぞ、かれぞ」


など言ふに、また

「あらず」


など言へば、人して見せなどするに、言ひあてたるは、

「さればこそ」


など言ふもをかし。


有明の、いみじう霧りわたりたる庭に、おりてありくをきこしめして、御前にも起きさせたまへり。

うへなる人々のかぎりは出でゐ、おりなどして遊ぶに、やうやう明けもてゆく。

「左衛門の陣にまかり見む」


とて行けば、我も我もと追ひつぎて行くに、殿上人あまた声して、

「なにがし一声の秋」


と誦(ず)してまゐる音すれば、逃げ入り、ものなど言ふ。

「月を見たまひけり」


などめでて、歌詠むもあり。


夜も昼も殿上人のたゆるをりなし。

上達部までまゐりたまふに、おぼろげにいそぐことなきは、かならずまゐりたまふ。




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・枕草子 原文全集「職の御曹司におはしますころ」

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萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 上」 新潮社
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店
松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館

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