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枕草子 原文全集「殿上の名対面こそ」

著者名: 古典愛好家
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殿上の名対面こそ

殿上の名対面(なだいめん)こそ、なほをかしけれ。御前(ぜん)に人さぶらふをりは、やがて問ふもをかし。あしをとどもしてくづれ出(いづ)るを、上の御局(つぼね)の東おもて、耳をとなへて聞くに、しる人の名のあるは、ふと、例の胸のつぶるらむかし。また、ありともよく聞かせぬ人など、このをりに聞きつけたるは、いかが思ふらむ。

「名告(なの)りよし、あし、聞きにくし」


などさだむるもをかし。


果てぬなりと聞く程に、滝口の、弓ならし、沓(くつ)の音し、そぞめきいづると、蔵人のいみじく高くふみこほめかして、丑寅(うしとら)のすみの高欄(かうらん)に、高膝まづきといふゐずまひに、御前のかたにむかひて、後ざまに

「誰々かはべる」


と問ふこそをかしけれ。高く細く名告り、また、人々さぶらはねば、名対面(なだいめん)つかうまつらぬよし奏するも、

「いかに」


と問へば、さはる事ども奏するに、さ聞きてかへるを、方弘(まさひろ)きかずとて、君達(きんだち)の教へたまひければ、いみじう腹だちしかりて、かうがへて、また、滝口にさへ笑はる。


御厨子(みづし)所の御膳棚(おものだな)に沓(くつ)おきて、いひののしらるるを、いとをかしがりて、

「誰か沓にかあらむ。え知らず」


と殿司(とのもづかさ)人々などのいひけるを、

「やや、方弘がきたなきものぞ」


とていとど騒がる。




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・枕草子 原文全集「殿上の名対面こそ」

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松尾聰,永井和子 1989年「完訳 日本の古典 枕草子」小学館
萩谷朴 1977年「新潮日本古典集成 枕草子 上」 新潮社
渡辺実 1991年「新日本古典文学大系 枕草子・方丈記」岩波書店

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