新規登録 ログイン

9_80 文章の読み解き / 文章の読み解き

『顕雅の言ひ間違ひ(楊梅大納言顕雅卿若くよりいみじく言失~)』十訓抄 わかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
Text_level_1
マイリストに追加
はじめに

ここでは、十訓抄の一節『顕雅の言ひ間違ひ(楊梅大納言顕雅卿若くよりいみじく言失~)』の現代語訳と解説をしています。

原文

楊梅大納言顕雅卿(やまもものだいなごんあきまさきょう)は、若くよりいみじ言失(ごんしつ)ぞしたまひける

神無月のころ、ある宮ばらに参りて、御簾(みす)の外にて女房たちと物語りせられけるに、時雨のさとしければ、供なる雑色(ざふしき)をよびて、

「車の降るに時雨さし入れよ」


とのたまひけるを、

「車軸とかやにや。恐ろしや」


とて、御簾の内笑ひあはれけり。さてある女房の

「御いひたがへ常にありと聞こゆれば、実(まこと)にや、御祈りのあるぞや」


といはれければ、

「そのために三尺のねずみを作り供養せむと思ひ侍る」


といはれたりける。折節、ねずみの御簾のきはを走り通りけるを見て、観音に思ひまがひてのたまひけるなり。「時雨さし入れよ」にはまさりておかしかりけり。

現代語訳

楊梅大納言顕雅卿は、若い頃からよく言い間違いをなさる人でした。

10月のとある日、顕雅卿がある皇族のもとに参上して御簾の外で女房たちと談笑していらっしゃったときに、時雨が降り出してきました。顕雅卿は連れていた従者を呼んで、

「車が降るから時雨をしまえ」


とおっしゃいました。(これを聞いた女房たちは)

「車軸が降るのかしら。恐ろしいわ」


と御簾の中で笑ったのでした。そこでとある女房が

「あなた様はいい間違いをいつもなさると伺っていましたが、本当なのでしょうか、(言い間違えをなくすための)ご祈祷があるというのは?」


と顕雅卿に言われたので、(顕雅卿は)

「そのために、三尺の大きさのねずみを作って供養しようと思っているのです。」


とおっしゃいました。ちょうどそのときに、ねずみが御簾の端を走って通っていったのを見て、(顕雅卿は)観音という言葉(とねずみという言葉)を思い間違えておっしゃったのです。「時雨を入れなさい」と言ったことよりもいっそう面白いことでした。

次ページ:話の楽しみどころと単語・文法解説

1ページへ戻る
前のページを読む
1/2
次のページを読む

Related_title
もっと見る 


Keyword_title

Reference_title
佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
『教科書 高等学校 標準国語総合』 第一学習社

この科目でよく読まれている関連書籍

このテキストを評価してください。

※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。

 

テキストの詳細
 閲覧数 20,502 pt 
 役に立った数 17 pt 
 う〜ん数 2 pt 
 マイリスト数 0 pt 

知りたいことを検索!

まとめ
このテキストのまとめは存在しません。