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枕草子『にくきもの』 その2 (ものうらやみし、身の上嘆き~)わかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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にくきもの

このテキストでは、清少納言が書いた枕草子「にくきもの」(ものうらやみし、身の上嘆き~)の一節の現代語訳・口語訳とその解説をしています。少し長いので2回にわたってお送りしますが、今回はその2回目です。

前回のテキスト:枕草子『にくきもの(急ぐことあるをりに来て~)』の現代語訳

原文

ものうらやみし、身の上嘆き、人の上言ひ、露ばかりのこともゆかしがり、聞かまほしうして、言ひ知らせぬをば、怨じそしり、また僅かに聞き得たることをば、わがもとより知りたることのやうに、異人にも語りしらぶるも、いとにくし。

もの聞かむと思ふほどに泣くちご。烏の集まりて飛び違ひ、さめき鳴きたる。

忍びて来る人、見知りてほゆる犬。あながちなる所に隠し臥せたる人の、いびきしたる。また、忍び来る所に、長烏帽子して、さすがに人に見えじとまどひ入るほどに、ものにつきさはりて、そよろといはせたる。伊予簾など掛けたるに、うちかづきて、さらさらと鳴らしたるも、いとにくし。帽額の簾は、まして、こはしのうち置かるる音、いとしるし。それも、やをら引き上げて入るは、さらに鳴らず。遣戸を、荒くたてあくるも、いとあやし。すこしもたぐるやうにしてあくるは、鳴りやはする。あしうあくれば、障子なども、こほめかしうほとめく こそ、しるけれ

ねぶたしと思ひて臥したるに、蚊の細声にわびしげに名のりて、顔のほどに飛びありく。羽風さへ、その身のほどにあるこそ、いとにくけれ。

きしめく車に乗りてあるく者、耳も聞かぬにやあらむと、いとにくし。わが乗りたるは、その車の主さへにくし。

また、物語するに、さしいでして、我ひとりさいまくる者。すべてさしいでは、童も大人いともにくし。

現代語訳

人のことをうらやましく思い、自分の身上を嘆き、他人のことを噂し、ほんのわずかなことでも知りたがり、聞きたがったりして、教えなければ恨み、またちょっとだけ聞きかじったことを、自分はもともと知っていたというように他の人に語っているのもいらっとくる。

話を聞こうとすると泣く子ども。鳥が集まって飛びかって、さわがしく鳴いているとき。

忍んで(夜に女性の家に遊びにやって)きた人に、気づいてほえる犬。(内緒で通ってきた男性が家の人に見つかってしまうので)無理な所に隠しておいた人が、いびきをかいている様子。また、こっそりと遊びにやってくるところに、長烏帽子をつけてきて、それでも人に見つからないように慌てて部屋に入るときに、烏帽子がものにつきあたって、がさっと音をたてること。伊予の国産の簾(すだれ)などが掛けてあるのを、くぐるときにそれを頭にかぶって、さらさらと音をたてるのも、とてもいらっとする。帽額の簾は、特に端っこにあたる音がとてもはっきりとわかる。引き戸を荒く閉めたり開けたりするのも、とてもけしからんことだ。静かに引き上げて部屋に入ってくれば、全く鳴らないのに。下手に開けると、障子などでも音が鳴るものだ。

眠たいと思って伏せていると、蚊が細い声でわびしそうに出てきて、顔のまわりを飛び廻っている。飛ぶ音が蚊の身の丈にあった大きさの音であることもいらっとくる。

きしきしと音をたてる牛車に乗って歩きまわる者が、耳が聞こえないのではないだろうかと、いらっとくる。私の乗っている牛車がそんな音を立てたときは、その牛車の持ち主までもがしゃくにさわる。

また、お話をしているときに、でしゃばって自分ひとりで先回りする者。往々にしてでしゃばりは、大人だろうが子どもだろうがいらっとくる。

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『教科書 明解 国語総合』 三省堂
『教科書 新編国語総合』 大修館書店
佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店

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