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9_80 文章の読み解き / 文章の読み解き

今物語 『桜木の精』 わかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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『桜木の精』

このテキストでは、今物語の中にある、「桜木の精」の現代語訳をしています。今物語は鎌倉時代に作られた物語です。

解説

この時期の結婚は通い婚と言って、夫婦で一緒に住むのではなく、男性が女性の家に訪ねていくというスタイルでした。また男性は妻を何人も抱えていた時代ですので、女性に飽きてしまったら男性は女性のもとを訪れることはなくなります。この物語のように、ずっと男性を待ち続けている女性の描写が、古典の作品の中には多く見られます。
そのことを頭にいれて読み進めてみましょう。

原文

小式部内侍、大二条殿におぼしめされけるころ、久しく仰せ言なかりける夕暮れに、あながちに恋ひ奉りて、 端近くながめいたるに、御車の音などもなくて、ふと入らせ給ひたりければ、待ち得て夜もすがら語らひ申しける。暁方に、いささかまどろみたる夢に、糸の付きたる針を御直衣の袖に刺すと見て夢覚めぬ。

さて帰らせ給ひにけるあしたに、御名残を思ひ出でて、例の端近くながめいたるに、前なる桜の木に糸の下がりたるを、あやしと思ひて見ければ、夢に、御直衣の袖に刺しつる針なりけり。いと不思議なり。

あながちに物を思ふ折には、木草なれども、かやうなることの侍るにや。その夜御渡りあること、まことにはなかりけり。

現代語訳

小式部内侍が大二条殿に寵愛を受けていた頃のことです。久しく殿が通ってくることがなかった時期の夕暮れに、小式部内侍はひたすら殿のことを思って家の端の近く(部屋の外に近いところ)で物思いにふけっていました。すると、(殿がやってくるときにいつも聞こえる)車の音は聞こえないのに、殿がふと家に入っていらっしゃいました。待ちに待った訪問だったので、小式部内侍は、夜通し殿に話していました。明け方になってうとうとして夢を見たのですが、その夢の中で殿の直衣に糸のついた針を刺しているところで目が覚めてしまいました。

そして殿がお帰りになった朝に、殿のことを思い出しながら部屋の端の方で外を眺めていると、目の前にある桜の木に、糸がぶらさがっていました。不思議に思ってみてみると、夢の中で殿の直衣に刺した針でした。とても不思議なことです。

一途に誰かを思うときには、草木であってもこのようなことがおこるのですねぇ。その夜に殿が尋ねてきたという事実は、なかったとのことです。

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佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
『教科書 高等学校国語 国語総合』 東京書籍
『教科書 精選国語総合』 東京書籍
『教科書 新編国語総合』 東京書籍

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