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9_80 文章の読み解き / 文章の読み解き

徒然草『猫また』わかりやすい現代語訳と解説

著者名: 走るメロス
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はじめに

このテキストでは、吉田兼好の書いた徒然草の中の第八九段、「猫また」の現代語訳をしています。徒然草は吉田兼好(卜部兼好)によって鎌倉時代に書かれた随筆で、清少納言の『枕草子』鴨長明の『方丈記』とあわせて三大随筆と言われています。

原文

「奥山に、猫またといふものありて、人を食ふなる」


と人の言ひけるに、

「山ならねども、これらにも、猫の経上りて、猫またに成りて、人とる事はあなるものを」


と言ふ者ありけるを、何阿弥陀仏とかや、連歌しける法師の、行願寺の辺にありけるが聞きて、独り歩かん身は心すべきことにこそと思ひける比しも、ある所にて夜更くるまで連歌して、ただ独り帰りけるに、小川の端にて、音に聞きし猫また、あやまたず、足許へふと寄り来て、やがてかきつくままに、頸のほどを食はんとす。肝心も失せて、防かんとするに力もなく、足も立たず、小川へ転び入りて、

「助けよや、猫またよや、よや」


と叫べば、家々より、松どもともして走り寄りて見れば、このわたりに見知れる僧なり。

「こは如何に」


とて、川の中より抱き起したれば、連歌の賭物取りて、扇・小箱など懐に持ちたりけるも、水に入りぬ。希有にして助かりたるさまにて、はふはふ家に入りけり。 飼ひける犬の、暗けれど、主を知りて、飛び付きたりけるとぞ。

現代語訳

「山奥に猫またというのがいて、人を食い殺しているらしいぞ。」


と人々が言っていましたが、

「山でなくてこのあたりでも、猫が化けて猫またとなって人をさらうことがあるらしい。」


と言う人もいました。
何阿弥陀仏とかいう、連歌をやる、行願寺にいた僧がこれを聞いて

「自分のように一人で歩くような身の人間は気をつけなければならないなぁ。」


と思っていたところのことです。
この僧が、ある所で夜がふけるまで連歌をして一人で帰っていたところ、小川のほとりでうわさに聞いた猫またが、正確に僧の足元にさっと寄ってきて、そのまま飛びついて首のあたりに噛みつこうとします。僧はびっくりして防ごうとしますが、力が抜けてうまう立てずに、小川へ転がり落ちてしまいました。

「助けてくれ!猫まただ、おーい!!」


と叫んだところ、近くの家の人々がたいまつなどに火をつけて走り寄ってきました。見てみると、このあたりで知られている僧ではないですか。人々は

「これはどうしたものか!?」


と言って、僧を川の中から抱き起こしました。連歌での賭け物や、扇・小箱などふところに入れていたものも水につかってしまいました。僧は、「幸運にも助かった」と、はう様子で家の中に入ってしまいました。飼っていた犬が、暗い中でも飼い主が帰ってきたのを知って、飛びついたということでした。

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佐竹昭広、前田金五郎、大野晋 編1990 『岩波古語辞典 補訂版』 岩波書店
『教科書 新編国語総合』 東京書籍
『教科書 国語総合』 桐原書店
『教科書 高等学校国語 国語総合』 東京書籍

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