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伊勢物語『ゆく蛍・行く蛍』の現代語訳・口語訳
著作名: 走るメロス
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伊勢物語『ゆく蛍』

ここでは伊勢物語の中の『ゆく蛍』の現代語訳をしています。

原文(本文)

昔、男ありけり。人の娘のかしづく、いかでこの男にもの言はむと思ひけり。うち出でむことかたくやありけむ、もの病みになりて、死ぬべき時に、「かくこそ思ひしか。」と言ひけるを、親聞きつけて、泣く泣く告げたりければ、惑ひ来たりけれど、死にければ、つれづれと籠りをりけり。時は水無月のつごもり、いと暑きころほひに、宵は遊びをりて、夜ふけて、やや涼しき風吹きけり。蛍たかく飛び上がる。この男、見ふせりて、

ゆく蛍雲のうへまで往ぬべくは秋風吹くと雁に告げこせ

暮れがたき夏のひぐらしながむればそのこととなくものぞ悲しき

現代語訳(口語訳)

昔、男がいました。ある人の娘で大切に育てている娘が、どうにかしてこの男に想いを伝えようと思っていました。打ち明けることが難しかったのでしょうか、病気になって、死んでしまいそうな時に、「このように思っていたのです。」と言ったのを、親が聞きつけて、(そのことを男に)泣く泣く告げたので、(男は)あわててやってきたのですが、(娘が)死んでしまったので、しみじみともの寂しく(女性の家で喪に服して)引きこもっていました。時は六月の下旬で、大変暑い頃で、宵には楽器の演奏をして、夜が更けてからは、少し涼しい風が吹いていました。蛍が高く飛び上がります。この男は、(その様子を)横になったまま眺めて、(次の詩を詠みました)

飛び上がる蛍よ、雲の上まで飛んでいくことができるのであれば、秋風が吹く(雁が飛来する季節になった)よと(天国の)雁(死んだ娘)に伝えておくれ

暮れにくい夏の一日中、物思いにふけっていると、なんとなくもの悲しく感じるものだ

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