manapedia
平家物語原文全集「小教訓 1」
著作名: 古典愛好家
1,884 views
マナペディア(manapedia)とは、中学校・高等学校で勉強する科目に特化した、マナビを共有し合う場です。たくさんのテキストの中からあなたにあったマナビを探したり、あなたが学習・勉強してきたマナビを形に残したりすることができます。テキストの内容に関しては、他の参考文献をご覧になり、ご自身の責任のもとご判断・ご利用頂きますようお願い致します。

平家物語

小教訓

新大納言は一間なるところにおしこめられ、汗水になりつつ、

「あはれ、これは日ごろのあらまし事の洩れ聞こえけるにこそ。誰洩らしつらん、定めて北面の者共が中にこそあるらむ」


なんど、思はじ事なうあんじつづけておはしけるに、うしろのかたより、足音のたからかにしければ、すは、ただ今、わがいのちをうしなはんとて、物のふ共が参るにこそ、と待ち給ふに、入道みづから、板敷たからかに踏みならし、大納言のおはしけるうしろの障子をさっとあけられたり。素絹の衣のみじからなるに、しろき大口踏みくくみ、ひじりづかの刀おしつくろげてさすままに、もってのほかにいかれる気色にて、大納言をしばしにらまへ、

「そもそも御辺は、平治にもすでに誅せらるべかりしを、内府が身にかへて申しなだめ、首をつぎ奉しはいかに。恩を知るを人とは言ふぞ。恩を知らぬをば畜生とこそ言へ。しかれども当家の運命尽きぬによって、迎へ奉たり。日ごろのあらましの次第、直にうけたまはらん」


とぞのたまひける。 大納言、

「まったくさる事候はず。人の讒言にてぞ候らむ。よくよく御尋ね候へ」


とぞ申されければ、入道言はせもはてず、

「 人やある、人やある」


と召されければ、貞能参りたり。

「西光めが白状まいらせよ」


と仰せられければ、持って参りたり。これをとって二三遍おしかへしおしかへし読み聞かせ、

「あな憎や、この上をば何と陳ずべき」


とて、大納言の顔にさっとなげかけ、障子をちょうど立ててぞ出でられける。


つづき

このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。