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蜻蛉日記原文全集「かくて八月になりぬ」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

かくて八月になりぬ

かくて八月になりぬ。二日の夜さりがた、にはかに見えたり。あやしと思ふに、

「あすは物忌みなるを、門つよく鎖(さ)させよ」


など、うち言ひちらす。いとあさましくもののわ沸(わ)くやうにおぼゆるに、これさしよりかれひきよせ

「念ぜよ念ぜよ」


と耳おしそへつまねささめきまどはせば、我がひとかのおれ物にて向かひゐたれば、むげに屈(くん)じはてにたりと見えけむ、またの日も日ぐらしいふこと、

「我が心のたがはぬを、人のあしう見なして」


とのみあり。いといふかひなし。



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