manapedia
蜻蛉日記原文全集「かくて四月になりぬ」
著作名: 古典愛好家
2,296 views
マナペディア(manapedia)とは、中学校・高等学校で勉強する科目に特化した、マナビを共有し合う場です。たくさんのテキストの中からあなたにあったマナビを探したり、あなたが学習・勉強してきたマナビを形に残したりすることができます。テキストの内容に関しては、他の参考文献をご覧になり、ご自身の責任のもとご判断・ご利用頂きますようお願い致します。

蜻蛉日記

かくて四月になりぬ

かくて四月になりぬ。十日よりしも、また五月十日許(ばかり)まで、

「いとあやしくなやましき心ちになんある」


とて、例のやうにもあらで、七八日おほとのにて、

「念じてなん、おぼつかなさに」


などいひて、

「夜のほどにてもあれば、かくくるしうてなん、内裏(うち)へもまゐらねば、かくありきけりと見えんも、便(びん)なかるべし」


とて帰りなどせし人、おこたりてと聞くに、まつほど過ぐる心ちす。あやしと、人知れずこよひをこころみんと思ふほどに、はては消息だになくてひさしくなりぬ。めづらかにあやしと思へど、つれなしをつくりわたるに、夜は世界の車の声にむねうちつぶれつつ、ときどきは寝入りて、明けにけるはと思ふにぞ、ましてあさましき。をさなき人かよひつつ聞けど、さるはなでふこともなかなり。いかにぞとだに問ひふれざなり。ましてこれよりは、なにせんにかはあやしともものせんと思ひつつ、暮らし明かして、格子などあぐるに、見出だしたれば、夜、雨のふりけるけしきにて、木ども、露かかりたり。見るままにおぼゆるやう、

よのうちはまつにもつゆはかかりけり あくればきゆるものをこそ思へ



このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。