manapedia
蜻蛉日記原文全集「さてそのころ帥殿の北の方いかでにかありけん」
著作名: 古典愛好家
1,790 views
マナペディア(manapedia)とは、中学校・高等学校で勉強する科目に特化した、マナビを共有し合う場です。たくさんのテキストの中からあなたにあったマナビを探したり、あなたが学習・勉強してきたマナビを形に残したりすることができます。テキストの内容に関しては、他の参考文献をご覧になり、ご自身の責任のもとご判断・ご利用頂きますようお願い致します。

蜻蛉日記

さてそのころ、帥殿の北の方、いかでにかありけん

さてそのころ、帥(そち)殿の北の方、いかでにかありけん、ささの所よりなりけりとききたまひて、この六月(みなつき)とおぼしけるを、使(つかひ)、もてたがへて、いまひとところへもていたりけり。取りいれて、はたあやしともや思はずありけん、かへりごとなどきこえてけり、とつたへききて、かのかへりごとをききて、ところたがへてけり、いふかひなきことを、またおなじことをもものしたらば、つたへてもきくらむに、いとねぢけたるべし、いかにこころもなく思ふらんとなんさわがるる、ときくがをかしければ、かくてはやまじと思ひて、さきの手して、

やまびこのこたへありとはききながら あとなきそらをたづねわびぬる

と、あさ花だなる紙にかきて、いと葉しげうつきたる枝に、立文(たてぶみ)にして、つけたり。また、さしおきて消えうせにければ、先のやうにやあらんとて、つつみ給ふにやありけん、なほおぼつかなし。あやしくのみもあるに、など思ふ。ほどへて、たしかなるべきたよりをたづねて、かくのたまへる。

吹く風につけて物おもふあまのたく しほのけぶりはたづねいでずや

とて、いときなき手して、薄鈍(うすにび)の紙にて、松の枝につけたまへり。御かへりには、

あるるうらにしほのけぶりはたちけれど こなたにかへす風ぞなかりし

とて、くるみいろの紙にかきて、色かはりたる松につけたり。




このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。