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蜻蛉日記原文全集「かくてとしごろ願あるを」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

かくてとしごろ願あるを

かくてとしごろ願あるを、いかで初瀬にと思ひ立つを、立たむ月にと思ふを、さすがに心にしまかせねば、からうして九月に思ひ立つ。

「立たむ月には大嘗会(だいじょうえ)の御禊(ごけい)、これより女御代いで立たるべし。これすぐしてもろともにやは」


とあれど、わが方のことにしあらねば、しのびて思ひ立ちて、日あしければ、門出ばかり法性寺の辺(へ)にして、あかつきよりい出で立ちて、午時(うまどき)ばかりに宇治の院にいたり着く。

見やれば木の間より水の面つややかにて、いとあはれなる心ちす。しのびやかにと思ひて、人あまたもなうて出で立ちたるも、わが心のおこたりにはあれど、われならぬ人なりせばいかにののしりて、とおぼゆ。車さしまはして、幕などひきて、後(しり)なる人ばかりをおろして、川にむかへて、簾(すだれ)まきあげて見れば、網代どもさしわたしたり。行きかふ舟どもあまた、見ざりしことなれば、すべてあはれにをかし。

後(しり)のかたを見れば、来(き)こうじたる下衆ども、あやしげなる柚や梨やなどをなつかしげに持たりて食ひなどするも、あはれに見ゆ。破籠(わりご)などものして、舟に車かきすゑて、行きもて行けば、贄野(にべの)の池、泉川などいひつつ、鳥どもゐなどしたるも、心にしみてあはれにをかしうおぼゆ。かいしのびやかなれば、よろづにつけて涙もろくおぼゆ。







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