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蜻蛉日記原文全集「かうやうなるほどに、かのめでたき所には」
著作名: 古典愛好家
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蜻蛉日記

かうやうなるほどに、かのめでたき所には

かうやうなるほどに、かのめでたき所には、子うみてしよりすさまじげに成りにたべかめれば、人にくかりし心思ひしやうは、命はあらせてわが思ふやうにおしかへしものを思はせばや、と思ひしを、さやうになりもていく。はてはうみののしりし子さへ死ぬるものか。孫王の、ひがみたりし親王(みこ)のおとし胤(だね)なり。いふかひなくわろきことかぎりなし。ただこの心しらぬ人の、もてさわぎつるにかかりてありつるを、にはかにかくなりぬれば、いかなる心地かはしけむ。わが思ふにはいますこしうちまさりて嘆くらんと思ふに、いまぞ胸はあきたる。いまぞ例のところにうちはらひてなど聞く。されどここには例のほどにぞ通ふめれば、ともすれば心づきなうのみ思ふほどに、ここなる人、片言(かたこと)などするほどになりてぞある。出づとてはかならず

「いま来(こ)んよ」


といふも聞きもたりて、まねびありく。





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