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伊勢物語/古今和歌集『五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする』現代語訳と解説・品詞分解
著作名: 走るメロス
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はじめに

このテキストでは、古今和歌集そして伊勢物語の第60段「花橘」に収録されている「五月待つ花橘の香をかげば昔の人の袖の香ぞする」の現代語訳・口語訳と解説、そして品詞分解を記しています。

原文

五月待つ(※1)花橘の香をかげば(※2)昔の人(※3)袖の香ぞする

ひらがなでの読み方

さつきまつ はなたちばなの かをかげば むかしのひとの そでのかぞする

現代語訳

五月を待って咲く花橘の香をかぐと、昔親しくしていた人の袖(に薫いていたお香の)の香がすることだ。

解説

この歌は、古今和歌集ではよみ人知らずと収録されています。また、伊勢物語の第60段「花橘」には、次のように書かれています。

宮仕えが忙しく、妻のことをあまりかまってやれなかった男の妻が、他の男についてよその国に行ってしまいました。月日が経ち、元夫が勅使として出かけたところ、この元妻は、勅使(元夫)を接待する役人の妻となっていることがわかりました。この歌は、元夫が元妻に接待を受けているときに、酒の肴として出されていた橘をとって詠んだ歌です。元妻はこの歌を聞くまで、目の前にいる役人が自分の元夫だと気づくことはなかったということなので、

五月を待って咲く花橘の香をかぐと、昔親しくしていた人の袖(に薫いていたお香の)の香がすることだ。「あなたは懐かしく思いませんか?


という意味が託されているとも解釈できます。香で過ぎ去った昔の日々を思い出す、切なさのある歌ですね。

ちなみに元妻は、この歌を聞いて元夫の心持ちを知り自分を恥じたのか、その後尼となり山にこもって暮らしたということです。

単語

(※1)花橘橘は、現在でいう「こうじみかん」。五月の季節を感じさせる植物としてよく用いられる。この花にほととぎすがよく来ることから、ほととぎすも五月の季節を感じさせる動物としてよく用いられる
(※2)昔の人昔親しくしていた人
(※3)袖の香ぞする「袖の香」とは、袖にたきつけたお香のかおりのこと
(※3)ぞ~する係り結びの法則


品詞分解

※名詞は省略しています。

五月
待つタ行四段活用「まつ」の連用形
花たちばな
格助詞
格助詞
かげガ行四段活用「かぐ」の已然形
接続助詞
むかし
格助詞
格助詞
格助詞
係助詞(係り結び)
するサ行変格活用「す」の連体形(係り結び)


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