manapedia
杜牧『江南春(江南の春)』原文・書き下し文・現代語訳(口語訳)と解説
著作名: 走るメロス
120,705 views
『江南春(江南の春)』

ここでは、中国の詩人杜牧の詠んだ、「江南春」の原文(白文)、書き下し文と現代語訳・口語訳と解説(七言絶句・押韻・対句の有無など)をしています。

この漢詩は、のちに述べる理由から「江南春絶句」と呼ばれることもあります。

白文

※左から右に読んでください。

千 里 鶯 啼 緑 映 紅
水 村 山 郭 酒 旗 風
南 朝四 百 八 十 寺
多 少 楼 台 煙 雨 中

書き下し文

千 里 鶯 啼 (※1)緑 映 紅
千里鶯啼いて緑紅に映ず
せんりうぐいすないて みどりくれないにえいず

(※2)水 村 山 郭 酒 旗 風
水村山郭酒旗の風
すいそんさんかく しゅきのかぜ

(※3)南 朝 (※4)四 百 八 十 寺
南朝四百八十寺
なんちょう しひゃくはっしんじ

多 少 (※5)楼 台 (※6)煙 雨
多少の楼台煙雨の中
たしょうのろうだい えんうのうち

現代語訳(口語訳)

千里鶯啼いて緑紅に映ず
千里一体に広がる広大な土地のあちらこちらで鶯(うぐいす)が鳴き、木々の緑と花の紅とが(互いに照り)映えている

水村山郭酒旗の風
水辺の村や山あいの村では酒屋の旗が春風にはためいている

南朝四百八十寺
(仏教が栄えた)南朝の時代、(この辺りには)多くの寺が建てられたが

多少の楼台煙雨の中
今なおその建物の多くが(名残をとどめ)、煙るような雨の中にある(のが見える)

楽しみ方

この漢詩は、春の景色を見事に歌ったものです。1句目では、鶯が鳴き声と、新緑と花の紅のコントラストの美しさを、2句目では、村でのどかな風が吹いている情景を、3区目と4句目では、春雨の中に立つ古い寺院のたたずまいが詠まれています。そんな情景をイメージしながら漢詩を読んでみましょう。

文法解説

形式:七言絶句

4つの句からなる詩を絶句(ぜっく)といい、8つの句からなる詩を律詩(りっし)といいます。例えばこの詩では、「千里鶯啼緑映紅」を1句と考えます。この詩は4つの句からなるので、絶句です。

また、絶句のうち1つの句が5文字からなるものを五言絶句(ごごんぜっく)といい、1つの句が7字からなるもの七言絶句(しちごんぜっく)といいます。

以上から、この句は「七言絶句」となります。また、絶句であることからこの詩は、「江南春絶句」とも呼ばれています。

押韻:紅・風・中

押韻(おういん)とは、漢詩を読んだ時に一定のリズムが出るように、同じ響きの言葉を句の最後に置くことです。この詩では、

紅(Kou)、風(Fuu)、中(Chuu)

が該当します。カッコの中は日本語の音読みです。だいたいが日本語の音読みで判別することができますが、本来は、作者が生きた時代の発音で韻を踏んでいるかどうかを確認します。よって日本語の音読みだけでは判別ができない押韻も存在します。

押韻にはルールがあります。七言絶句では、原則として第1句、第2句、第4句に同じ響きの言葉が置かれます。

対句

なし。

単語

江南揚子江下流の江南地方のこと
(※1)緑映紅木々の緑と花の紅とが互いに照り映えてい美しい様を表している
(※2)水村山郭水辺の村や山あいの村
(※3)南朝中国南部に栄えた宋、斉、梁、陳の王朝をさす。これに呉・東晋を加えた六つの王朝を六朝と呼ぶ。仏教が栄え、その隆盛ぶりは「南朝四百八十寺」と讃えられた
(※4)四百八十寺「しひゃくはっしんじ」」と読む。数が多いことを表している
(※5)楼台ここでは「建物」と訳す
(※6)煙雨煙のように降る雨、霧雨


このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。