manapedia
土佐日記『忘れ貝』(四日。楫取り、『今日、風雲のけしきはなはだ悪し〜) わかりやすい現代語訳と解説
著作名: 走るメロス
57,871 views
マナペディア(manapedia)とは、中学校・高等学校で勉強する科目に特化した、マナビを共有し合う場です。たくさんのテキストの中からあなたにあったマナビを探したり、あなたが学習・勉強してきたマナビを形に残したりすることができます。テキストの内容に関しては、他の参考文献をご覧になり、ご自身の責任のもとご判断・ご利用頂きますようお願い致します。

土佐日記「二月四日/忘れ貝」

このテキストでは、土佐日記の「四日。楫取り、『今日、風雲のけしきはなはだ悪し』と言ひて〜」から始まる部分の現代語訳・口語訳とその解説を行っています。書籍によっては「二月四日」や「忘れ貝」と題するものもあるようです。

土佐日記の作者は紀貫之です。

原文

四日。楫取り、

「今日、風雲のけしきはなはだ悪し。」


と言ひて、船いださずなり(※1)ぬしかれどもひねもすに波風立たず。この楫取りは、日も(※2)え測らぬ かたゐなりけり。この泊の浜には、くさぐさうるはしき貝・石など多かりかかれば、ただ(※3)昔の人をのみ恋ひつつ、船なる人の詠める、
 
寄する波うちも寄せ(※4)なむわが恋ふる人忘れ貝降りて拾はむ

歌の解説

 
と言へれば、ある人のたへずして、船の心やりに詠める、
 
忘れ貝拾ひしもせじ(※5)白玉を恋ふるをだにも形見と思はむ

歌の解説

 
となむ言へる。女児のためには、親幼くなり(※6)ぬべし

「玉ならずもあり(※7)けむを。」


と人言はむ(※8)や。されども、

し子、顔よかりき。」


と言ふやうもあり。なほ同じ所に日を経ることを嘆きて、ある女の詠める歌、
 
手をひてて寒さも知らぬ泉にぞくむとはなしに日ごろ経にける

歌の解説


現代語訳

四日。船頭が、

「今日は、風や雲の様子がとてもよくない。」


と言って、船を出さないままになった。しかしながら、一日中波風は立たない。この船頭は、天候も予測できない愚か者であった。この港の浜辺には、(子どもの喜びそうな)様々な種類の美しい貝や石などがたくさんある。このようなわけで、ただ亡くなった人(自分の娘)のことばかりを恋しく思い、船にいる人(紀貫之の妻)が詠んだ(歌)。

(浜辺に)打ち寄せる波よ、どうか(恋しい人を忘れさせるという)忘れ貝を打ち寄せてほしい。そしたら(船から)降りて拾うから。


と詠んだので、居合わせる人がこらえることができずに、船旅の気晴らし(のため)に詠んだ(歌)。

忘れ貝は決して拾うまい。白玉(のようにかわいいあの子)を恋しく思うだけでも、(あの子の)形見と思いましょう。


と詠んだ。娘のためには、親は子どものようになってしまうのであろう。

「白玉と言うほどではなかっただろう。」


と人は言うだろうか。しかし、

「亡くなった子は、顔が美しかった。」


と言うようなこともある。依然として、同じ場所で時間が経つことを嘆いて、とある女性が詠んだ歌。

手を水にぬらしても冷たさを感じるわけではない泉、その和泉という場所で、水をくむわけでもなく数日を過ごしてしまったことよ。


次ページ:品詞分解と単語・文法解説


1ページ
前ページ
1/2
次ページ

このテキストを評価してください。
役に立った
う~ん・・・
※テキストの内容に関しては、ご自身の責任のもとご判断頂きますようお願い致します。